使っている式

DCモータはトルクと回転数が一次で反比例します。供給電圧を変えると、無負荷回転数とストールトルクが どちらも比例して動きます。

電圧補正      ω₀' = ω₀ × (V供給 / V定格),  τs' = τs × (V供給 / V定格)
ギヤ総合効率  η = η段 ^ 段数
車輪回転数    N車輪 = ω₀' / ギヤ比
最高速度      v = (N車輪 / 60) × π × D
車輪トルク    τ車輪 = τs' × ギヤ比 × η × モータ数
駆動力        F = τ車輪 / (D/2)
モータ限界    a_motor = F / m
グリップ限界  a_grip  = μ · (m·g + DF) / m

どちらが先に効くか

加速度はこの2つの小さいほうで決まります。ここを取り違えると対策が空振りします。

  • グリップ律速のとき:ギヤ比を上げてもタイヤが滑るだけで加速は変わりません。 吸引ダウンフォースを増やすか、μの高いタイヤに変えるほうが効きます。
  • モータ律速のとき:吸引を増やしても意味がありません。ギヤ比を上げる、 タイヤ径を小さくする、モータを増やす、電圧を上げるのいずれかです。

吸引なしの機体では、グリップ限界は μ·g で決まります。μ = 1.0 なら約9.8 m/s²で、質量とは無関係です (軽くすると駆動力も垂直荷重も同じ比率で減るため)。だから吸引を積まない機体は、軽量化だけでは 加速度の上限を上げられません。ここが吸引機構を積む理由です。

機械的時定数

τm = J · ω₀ / τs        J = ロータ慣性

モータが自分の回転を立ち上げるのにかかる時間の指標です。制御周期をこれより十分短くしないと 速度追従が間に合いません。並列にモータを増やしてもこの値は変わりません(トルクも慣性も同じ倍率で 増えるため)。同じ電圧・同じサイズなら、コアレスモータは鉄心モータより一桁小さい値になります。

入力例

  • 8520コアレス×2、7.4V、ギヤ比4、φ24mmタイヤ、120g:理論最高速度 約14.1 m/s、 駆動力 2.1N、モータ限界加速度 17.5 m/s²。吸引なしのグリップ限界は9.8 m/s²なので、 この構成はグリップ律速です。
  • 同じ構成に吸引240 gを追加:グリップ限界が29.4 m/s²に上がり、モータ律速に切り替わります。 ここから先はギヤ比を詰める意味が出てきます。

含んでいない要素

  • 走行抵抗(転がり抵抗、ベアリング損失、空気抵抗)。最高速度は無負荷回転数から出しているので、 実測はこれより必ず下がります
  • モータドライバの電圧降下と電流制限、バッテリの内部抵抗による電圧降下
  • 巻線温度上昇によるトルク低下。ストールトルクは連続では出せません
  • 加速中の荷重移動と、駆動輪への荷重配分
  • タイヤのスリップ率と摩擦特性の非線形性

ストールトルクを上限として扱っているので、モータ限界加速度は楽観的な数字です。実運用では 最大効率点付近を使うため、この6〜7割くらいで設計しておくのが無難です。